真なるかな真なるかな #メギド72

メギド72にハマっている。

最近急激にユーザー数を増やしているスマホゲームだ(ソーシャルゲームではない) 。

メギドは祖と真の二種に大きく分かれ、祖の72のメギドはいわゆる「ソロモン72柱(レメゲトン)」に記載のある悪魔をベースにしている。

対して真の72のほうは「それ以外の伝承の悪魔」に題材を求めている。この「それ以外」がかなり範囲が広く、可能な限り確認できたものを記していこうと思う。

  • 真-1 リリム(Lîlîn)
    元ネタ:ユダヤ伝承
    アダムの一番最初の妻・リリスの娘とされる悪魔。別名「リリン」。
    エヴァの有名なセリフ「歌は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ」の『リリン』はこの悪魔のこと。
  • 真-2 ニバス(Nybbas)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    コラン・ド=プランシー『地獄の辞典』における地獄の宮廷の道化師長。
    幻視・悪夢などを司るとされる。
  • 真-3 サキュバス(Succubus)
    元ネタ:ヨーロッパ伝承
    ラテン語読みではスクブス(Succubus)。語源は「下に寝る(succubo)者」。語源通り女性型の淫魔の総称。
    ハインリヒ・クラーマー『魔女に与える鉄槌』などの魔女関連の論文にも頻出する悪魔。
  • 真-4 ユフィール(Uphir)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    『地獄の辞典』に名前の見える「外科医長」。
    地獄の悪魔たちの健康を保つ役割を果たすとされる。
  • 真-5 フリアエ(Friae)
    元ネタ:ローマ神話
    ローマ神話の復讐の女神。ただ、フリアエ(Friae)は複数形で単数形はフリア(Furia)。
    ギリシア神話のエリーニュエス(Erinyes、単数形エリーニュス Erinys)をローマに導入した女神たちの総称。古くは不定数だったが後になって三相女神となり三柱の女神の総称となった。
  • 真-6 アラストール(Alastor)
    元ネタ:ギリシア神話→中世ヨーロッパ悪魔学
    ギリシア語で「復讐するもの」の意味を持つ。ギリシア神話の「ネメシス(Nemesis)」の男性神格とされる。悪魔学に取り入れられ地獄の死刑執行官とされた。
    前述の「エリーニュス」もネメシスと同じく復讐の女神とされるが、エリーニュスがどちらかといえば人間同士の情動で発生する場合の「復讐」を司る存在とされたのに対して、ネメシスは人間から神への傲慢に対しての「復讐」を司るとされた。
  • 真-7 ヒュトギン(Hutgin)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    ヨーハン・ヴァイアーの『悪魔の偽王国』に名前のみえる悪魔。地獄の宮廷のイタリア大使を務めるとされる。
    コラン・ド=プランシーによれば妻の不貞を疑う夫がヒュトギンに命じ、妻が愛人をベッドに引き込むたびに放り出すように命じた逸話がある。
  • 真-9 インキュバス(Incubus)
    元ネタ:ヨーロッパ伝承
    ラテン語読みでインクブス(Incubus)。原義は「上にのしかかる(incubo)もの」。女性型のサキュバスに対して男性型の夢魔を指す。
    古くは5世紀のアウレリウス・アウグスティヌス神の国』にもインクブスの名前が見え、女性を襲い妊娠させると信じられた。
    ルネサンス時代にはその伝承を逆手にとって不義密通の言い訳として使われる例もあったとされる。
  • 真-10 グリマルキン(Grimalkin)
    元ネタ:ヨーロッパ伝承
    グレイマルキン(Greymalkin)とも。原典はイングランド伝承。シェイクスピアマクベス』にも登場する。

    今往くよ、灰毛猫《グレーモルキン》!

      ――『マクベス』第一場第一幕 魔女(坪内逍遥訳)

    魔女の使い魔のネコのことを指す名前であったらしい。

  • 真-11 コルソン(Corson)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    メギド72では四冥王とされるガープ・ジニマル・アマイモン・コルソンは『ゴエティア』で四方を司るものとされ、コルソンは南方の守護を司るとされる。
    別名、ゴルソン(Gorson)。
  • 真-12 ジニマル(Zymymar)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    27の悪魔を部下として従える悪魔。別名、ジミマイ(Zymymay)・ジミニアル(Zyminiar)。
    コルソンと同じく四方を司るとされ、北方を司るとされる。
  • 真-13 バフォメット(Baphomet)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    黒ミサを司るとされる。テンプル騎士団が信仰していたとされ、それを論拠に「テンプル騎士団が異端である」という審問に使われることとなった。
    オカルティズムやサタニズムではおなじみの存在だが、実は出典が判然とせず、11世紀末〜12世紀頃の書簡に名前が見える程度である。
  • 真-14 サラ(Sarah)
    元ネタ:旧約聖書
    かなり元ネタが特殊なメギド。 旧約聖書(プロテスタントでは認められていない)『トビト記』が出典であると考えられる。
    その同じ日にメデヤのエクバタナに於いて、ラグエルの娘サラその父の婢たちより辱しめられたり。そはかの女七人の男に嫁ぎたれど、その夫等ら彼と寢る前に惡靈アスモデオス彼等を殺したればなり。その婢等かれに言ふ『汝、夫たちを締め殺したるを知らざるか。汝既に七人の夫を持ちたるも、その一人の名をだに用ひしことなし』――トビト 3:7-8
    アスモデウスに取り憑かれ、嫁ぎ先の夫を7人も殺した娘の名前が「サラ」であり、メギド72のサラも取り憑かれていることを考えるとおそらく出典である可能性が高い。
  • 真-15 サタナキア(Satanachia)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    グリモワール『真正奥義書』に名前の見える悪魔。
    プルフラス、アモン、バルバトスを配下に持つ地獄の総司令官とされる。
  • 真-17 ティアマト(Tiamat)
    元ネタ:メソポタミア神話
    メソポタミア神話において原初の海の女神とされる。
    ティアマトは自らの生み出した新たな世代の神々との戦いにおいて「11の怪物」をみずからの身に宿し、新たな世代の神々と戦ったとされる。
    メギドのティアマトが自力で歩けないほど巨大な腹部をしているのはそのせいであると推察される。
  • 真-18 ブニ(Buni)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    ブネの配下とされる悪魔の名前。メギドでも原典でもほとんど設定が変わらない。
    『地獄の辞典』に名前が見える。
  • 真-22 カスピエル(Caspiel)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学カバラ
    月を司る天使であり悪魔。Caspiel、もしくはQaspielと綴るが、どちらの場合でも月を司ることには変わりがない。
    ソロモン王が使役したとされる霊のうちに含まれるため、どのタイミングで悪魔へと変質したかは不明。
  • 真-27 マルチネ(Martinet)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    『悪魔の偽王国』に名前の見える悪魔。地獄の宮廷のスイス大使を務めるとされる。
    また、16世紀イングランド・チェルムスフォードの魔女エリザベス・フランシスの魔女裁判時の証言によれば魔女の使い魔の名前として使う例があったとされる。
  • 真-31 フルーレティ(Fleurety)
    元ネタ:ヨーロッパ悪魔学
    グリモワール『真正奥義書』に名前の見える悪魔。ベルゼブブの部下でありバティン・エリゴス・プルソンを配下に持つ悪魔とされる。天候を操り、望む場所に雹を降らせる力があるとされる。
  • 真-33 ハック(Hack)
    元ネタ:ヨーロッパ伝承
    フレッド・ゲティングス『悪魔の辞典』によると「文学的表現での『悪魔』」のことを指すとされる。ある種の隠語のようなものである様子。
    『ソロモンの小さな鍵』に地獄の首領として最有力の一人と記載がある。
  • 真-36 メフィスト(Mephisto)
    元ネタ:ヨーロッパ伝承(主にドイツ)
    16世紀ファウスト伝説に名前の見られる悪魔だが、元来はメフィストフェレス(Mephistopheles)と呼ばれる(メフィストと短縮して呼ぶ文献がないわけではない)。
    ファウスト博士と契約を取り交わし、ファウスト博士の魂を弁舌でどうにか悪徳の道へと進ませようとする悪魔とされる。シェイクスピアウィンザーの陽気な女房たち』にも名前の出てくる悪魔でもある。

    どうしたと、このメフィストフィリウスめ!

      ――『ウィンザーの陽気な女房たち』(小田島雄志訳/白水Uブックス)

  • 真-38 ガリアレプト(Agaliarept)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    グリモワール『真正奥義書』また、『大奥義書』に名前の見える悪魔。
    『真正奥義書』ではサタナキア・ルシフェルとともにヨーロッパ・アジアに住むとされる。『大奥義書』ではサタナキアとともにブエル・グシオン・ボティスを配下に持つ地獄の司令官とされている。
  • 真-41 アマイモン(Amaimon)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    マグレガー・メイザース訳『アブラメリンの書』、アレイスター・クロウリー『777の書』、『ゴエティア』等に名前の見える悪魔。
    ガープらとともに四方を司る悪魔とされる。アマイモンは東を司るとされるが『777の書』では北を、『アブラメリンの書』ではオリエンス・パイモン・アリトンとともに四方を司り、方角が一定しない(北・南・東のどれかとされる)
  • 真-43 サルガタナス(Sargatanas)
    元ネタ:ヨーロッパ悪魔学
    『真正奥義書』『大奥義書』に名前の見える悪魔
    契約者の姿を透明にしたり、あらゆる鍵を開け様々なところを覗き見させたりする悪魔。『法王ホノリウスのグリモア』によると地獄の宮廷内では准将の立場にあるらしい。
  • 真-49 サタナイル(Satanail)
    元ネタ:旧約聖書偽典
    『第二エノク書』等の外典・偽典に名前の見える堕天使の一柱。後述のシャミハザと同じく堕天使の一団グリゴリの長とされている。
  • 真-50 シャミハザ(Shamhazai)
    元ネタ:旧約聖書偽典
    『第一エノク書』、『ヨベル書』等の外典・偽典に名前の見える堕天使の一柱。 『エノク書』に記載のある堕天使の一団グリゴリの長とされる。
    グリゴリは人間たちに禁じられていた知識を与え、ノアの大洪水の遠因となったとされる。ゆえにシャミハザは『文化英雄(後述)』としての側面を持つとされるとされる。
  • 真-51 プルフラス(Pruflas)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    ヨーハン・ヴァイアー『悪魔の偽王国』に名前のみえる悪魔。
    ゴエティア』には登場しない悪魔だが、『大奥義書』ではサタナキアの配下の悪魔であるとされる。
  • 真-52 ジズ(Zîz)
    元ネタ:ユダヤ伝承
    旧約聖書に登場するベヒモスレヴィアタンとともに三体で一対とされる巨大な怪物たちの一体。
    ベヒモスが陸、レヴィアタンが海、ジズが空を象徴するとされ、ジズは巨大な鳥として説明されている。
  • 真-55 アリトン(Ariton)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    アブラメリンの書』『777の書』に名前の見える悪魔。アマイモン・オリエンス・パイモンともに四方を司るとされ、司る方角は西・北の二つの説がある。
  • 真-57 ベヒモス(Behemoth)
    元ネタ:ユダヤ伝承
    前述のジズと出典は同一。天地創造の5日目に作り出したとされる獣であり、1日に千の山に生える草を食い尽くすほどとされる。
    中世以降は悪魔であるという見方が強まり、暴飲暴食を司るとされるが七大罪においての「暴食」に対応する悪魔はベルゼブブである。
  • 真-58 ダゴン(Dagon)
    元ネタ:カナン神話
    クトゥルフ神話にも同名の神格が存在するが、そちらはこの神が流用されたものであるため注意。
    古代パレスチナにおいてペリシテ人が信仰していた神。『士師記』においてサムソンが柱を引き倒すことにより3000人のペリシテ人とともに死んだとされる説話はこのダゴンの神殿におけるもの。
    『地獄の辞典』では地獄のパン焼きとパンの管理を司るとされる。
  • 真-62 インプ(Imp)
    元ネタ:ヨーロッパ伝承
    どちらかといえば妖精に近い存在の悪魔。
    古英語のimpa(挿し木)に由来し、種もないのに花を咲かせ実を付けることから魔術的意味のある植物であるとされていた。そこから転じ「(名門の)御曹司」などの意味が生じ、17世紀頃には「imp of the devil」などの形で悪魔と関連付けが行われていた。
    なお、この時点でもうすでに魔女などに使役される小悪魔というイメージがほぼ固定されていたようである。
  • 真-64 プロメテウス(Prometheus)
    元ネタ:ギリシア神話グノーシス主義
    現在実装されているメギドのなかでおそらくもっとも元ネタが難解なメギド。
    まずはプロメテウスという神について。ギリシア神話において天界から火を盗み人間に与えたとされる神である。その行為によりプロメテウスは岩に縛り付けられ、3万年のも間生きながら延々と肝臓をついばまれるという責め苦を受けることとなった。
    このためプロメテウスは「文化英雄」とされる場合がある。文化英雄というのは神話学において「神の知識」であったものを神の手から人の手に渡したものの総称である。ネイティヴアメリカン神話のコヨーテやレイヴン、中米神話のケツァルコアトル、前述のグリゴリなど全世界の神話にあまねく見られる。
    そしてグノーシス主義。紀元2〜3世紀ごろの初期キリスト教の異端とされ(近年の学説では「異端」ではなく「異教」と考えられているが、一旦は「異端」であるとして話を進める)、「反宇宙的二元論」を基盤とする思想である。
    グノーシス主義に関してあまり筆を割くわけにもいかないため、非常に割愛した文となってしまうが、とても興味深い思想であるため一度お調べになってみることをおすすめしたい。
    雑駁に書くならばグノーシスの神話においては今我々がいる世界を偽の宇宙であり、純化された善の宇宙が別にあると説く。そして「ソピア」と呼ばれる神の作った「ヤルダバオト」という狂える神が今我々のいる世界を作ったとする。 そして、グノーシス的視点において、聖書・創世記の「楽園追放」は次のように変質する。
    ルシフェルという名の蛇が至高なる者としてアダムとイヴという人間のもとに遣わされ、人間らに知識を与えた』(グノーシス主義オピス派の唱える説)
    さて、ここで名前の出てきたルシフェル(Lucifer)はラテン語で光(Lux→Luci-)+運ぶもの(ferre→-fer)と解釈される。また、光(知識)を運んだためこの蛇を「文化英雄」と見る場合もあり、ゆえにルシフェルを文化英雄と見ることもできる。
    ここで思い出してほしいのが、プロメテウスもルシフェルと同じく「光(=炎)を人間に与えた」ということである。このつながりをもってして、グノーシス主義ではプロメテウスとルシフェルを同一と見なす場合があり、メギド72はこのつながりを逆順にたどることで「プロメテウス=ルシフェル」と解釈し、プロメテウスを悪魔たる存在だと定義したものと考える。
  • 真-68 ネルガル(Nergal)
    元ネタ:メソポタミア神話
    前述のティアマトと出典は同一。太陽神としての側面を持ち、一般的な太陽神として陽の側面をフィーチャーされることもあるが、メソポタミアにおいては夏が死の季節であり、疫病や黄泉をも司るとされる。
  • 真-69 バールゼフォン(Baalzephon)
    元ネタ;エジプト伝承→ヨーロッパ悪魔学
    古代エジプトで奴隷の逃亡を防ぐとして信奉されていたとされる。
    名前にバアル(Baal)が含まれていることからカナン文明の関連があるものと思われる。
  • 真-70 アスラフィル(Asrafil)
    元ネタ:イスラム
    イスラム教の死の天使であり音楽の天使。最後の審判の日に喇叭を吹き鳴らし眠っている死者を目覚めさせるとされる。
    ただ、アスラフィル自身に悪魔の属性はなく、ここに同一視されているダンテの『神曲』の「黒い天使」を絡ませているものと思われる。黒い天使たちは地獄の裁判長のもとへ悪人の魂を運ぶ役割を担っている
  • 真-71 アクィエル(Aquiel)
    元ネタ:中世ヨーロッパ悪魔学
    安息日(Aquel)に関連する悪魔。安息日はそのとおりに労働をすることを禁じる日のことだが、その日を妨げる悪魔とされている。
    メギドでは安息=死となぞらえ、死を妨げる=死霊を操る、と解釈されている

2019/09/24 更新