紙に歌えば

今週のお題「私の沼」

 

前回の記事はそれなりの支持をいただけたようで、誠にありがとうございます。

 

うん、「また」なんだ。済まない。

仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

 

でも、このブログタイトルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない

「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。

殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい、

そう思って、この記事を書いたんだ。

 

じゃあ、本文にいこうか。

(バーボンハウスコピペってまだ通じるんですかね)

 

閑話休題

 

「折り紙」が好きで好きで、というタイプでして。

気がついたら海外から取り寄せる本も山のように。

読めない言葉の本まであるのは自分でもさすがにどうかと思う(ポーランド語とロシア語はさすがにつらい)

 

折り紙のジャンルというのは極論すると

・生物

・非生物

・実用

・幾何

の4ジャンルに分かれます。

生物は言わずもがな。古典作品でいえば「折り鶴」「やっこさん」などが該当するでしょうか。

非生物は古典作品でいうならば「紙風船」「にそう舟」が代表でしょう。

実用は名の通り。「箸袋」や「たとう紙(紅入れ)」などなど。

そして本題の『幾何』です。

 

「折り紙の幾何」というジャンルは近年「オリガミクス」という数学の一ジャンルとしてのムーブメントが大きくあります。

近いところではチューハイや缶コーヒーの缶の「PCCPシェル」

宇宙航空工学のスピンオフ | ロケットの基礎知識 | JAXA 第一宇宙技術部門 ロケットナビゲーター

この製缶技法は日本の折り紙が関わっています。

研究者の三浦公亮氏の名を冠した「ミウラ折り」というものもあったり(こちらは地図の折りたたみや宇宙空間での太陽光電池の折りたたみに使われていたり)

小難しいことは置いておいて、私はこういった「幾何学的美」を折り紙の中に見出した作品を好んで作っています。

日本では「ユニット折り紙」、海外では「Modular Origami」と呼ばれるジャンルに関しては、かなりの量の資料を収集しています。

 

薗部光伸氏の「そのべユニット(薗部式ユニットとも)」を始祖とし、布施知子氏を「ユニット折り紙の女王」として世界に広がったジャンルです。

エカテリーナ・ルカシェーワ(Ekaterina Lukasheva)氏やメーナクシ・ムケルジ(Meenakshi Mukerji)氏などの海外作家も多く、それ専任で創作を行う作家もめずらしくありません。

幾何的な美しさに心奪われてしまう人はかなり多いものと見えます。

自分もその一人なのですけども……。

作ってみると分かるんですが、瞑想や座禅に似た自己との対話の世界に入っていくんですよね。

同じパーツを30折り、それをパズルのようにきちんきちんと組み立てていく……何も考えない、という贅沢がそこにあります。

ぜひとも一度やってみてほしいところ。さあ、紙は百円均一でいいから。早く。ほら。 

 

「一枚不切正方形」。というのがここ十数年の折り紙界のキーワード、なのですが、自分はどこか一つ外して、それが美しいのであるなら、それは「美」なのだ、と考えています。

一枚不切正方形というのは

「一枚」……紙を1枚だけ使うこと。複数枚の紙を使用しないこと。

「不切」……切り込みを入れたりしないこと。当然、破ったりもしない。

「正方形」……そのままの意味。長方形や三角形などのイレギュラーな用紙を使わない。

の総称です。一種のレギュレーションだと思っていただければ。

遵守は求められませんが、ここ数年の折り紙界の潮流は「大型化・複雑化」の一途でもあり、その複雑なモチーフをどうこのレギュレーション内で完結させるか、が腕の見せ所となっています。

多くのユニット折り紙作品(複数枚を使う)や佐藤ローズ(正五角形用紙を使う)のような優れた作品が多く輩出されてきた今、それにこだわって美を損ねることはない……と言うのは言い過ぎですが、もっと視野を広げるのも時に大切なのだな、と紙から多くを学ぶばかりです。

 

さらに言うなら、いっそ「紙」という素材さえも脱却してしまっていいのかもしれません。

オリエステル*1やおりあみ*2といった非紙折り紙が出てきていることを考えると、「紙」という素材からすら外れてもそれは「折り紙」なのだ、と勇気づけられるような気さえします。

 

紙を折るだけ。言い切ってしまえばそれだけでしかないのに、魔法のように形を変える薄っぺらな物体。

それに魅せられた人間は、もうもとに戻ってくることはないのでしょう。

でも、それが幸せなんです。温かい沼に浸かってあっぷあっぷして、ときどき呼吸ができるならば。